離婚のための基礎知識

「離婚」と一口に言っても、離婚届に署名と印鑑を押せば終わり、というわけではありません。財産分与、浮気をされて離婚をする場合は慰謝料、子どもがいれば養育費、親権の問題があります。

離婚には協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の四段階があります。ワイドショーで芸能人の離婚を見ていると、裁判離婚を思い浮かべますが、実際裁判にまで至るのはレアケースで、離婚の約90%は当事者同士の話し合いで解決する「協議離婚」という形で離婚し、約9%は調停離婚で離婚しています。審判離婚はまずなく、裁判離婚は残り約1%でしかありません。

ここでは離婚に関する用語をまとめたうえで、協議離婚と調停離婚に焦点を絞って、この二つの離婚で有利に別れるための準備を説明します。  

離婚届

協議離婚の場合は離婚届のみ、調停離婚の場合は離婚届と調停調書の謄本を提出します。また、本籍地以外の役所に提出する場合は、右記の書類に加えて、戸籍謄本1通(地域によっては2通)が必要になります。

証人

協議離婚の場合のみ必要になります。離婚届に記載された内容にのみ責任を負う人で、養育費や慰謝料の取り決めを保証する必要はありませんい。日本国籍を持つ成人なら誰でも証人になれます。夫側から1人、妻側から1人ということではなく、夫側2人というのでも可能です。

不受理申出

離婚を協議している間に、相手が勝手に離婚届を出してしまう怖れがある場合、この書類を提出しておきましょう。6ヶ月間効力があり、その間に一方的に出された離婚届を無効にできます。また一度提出した後、6ヶ月以内に離婚を受理する場合は、不受理申出取下書きを提出すれば、不受理申出を取り下げられます。不受理申出、不受理申出取下書きともに、夫婦の本籍地の役所へ提出します。最寄りの役所に提出すれば、本籍地の役所へ転送してくれます。

財産分与

夫婦が婚姻中に築いた共有財産を精算し、分配します。直接収入のない専業主婦でも、家事をこなし生活を支えた妻の寄与分として、50%くらいはもらえます。ただし二年以内に請求しないと時効となってしまいます。

慰謝料

慰謝料は離婚の原因を作った側が払うもので、いわば加害者が被害者に支払う賠償金です。夫婦の不仲が原因で離婚する場合は発生しませんが、浮気が原因の場合は、ここできっちりとした証拠があると有利に進められます。三年以内に請求しないと時効になってしまいますので、注意が必要です。

養育費

未成年の子どもが成人するまで、もしくは高校・大学を卒業(親の学歴に準じます)して就職するまで支払う場合とあります。明確な規定があるわけではないので、公正証書でお互いが納得いくように取り決めましょう。

公正証書

調停離婚と違って協議離婚の場合、慰謝料、財産分与、養育費などの金銭内容の取り決めが、口約束、もしくは契約書や念書、合意書などになりがちです。しかしこれらには強制執行力がないという弱点があります。
離婚の際重要な取り決めを公正証書に記載することで、法的強制力を持たせることができます。協議離婚する場合もっとも重要な点だといえるでしょう。公証人役場で作成し、実印と印鑑証明、身分証明書が必要になります。公正証書作成料として数千円から数万円程度かかりますが、それ以後の生活を考えれば非常に安いといえます。


「協議離婚」 〜公正証書と浮気の証拠で有利に

お互いが離婚する意思があることを確認した上で、財産分与、慰謝料、未成年の子どもがいる場合は親権者と養育費の話し合いをします。ここで重要なのが、口約束だけですまさず、公正証書を作っておくことです。口約束だけだと離婚した後、いつまでたっても払ってくれない怖れがありますが、公正証書があれば、強制執行力がありますので、相手の財産を没収することも可能です。慣れないことかもしれませんが、後々のことを考えて、面倒くさがらずに公正証書を使った方が将来的に助かります。これは逆に言うと、間違っても感情的になって離婚を決意しない方がよいということです。

「調停離婚」 〜ここまでで離婚のほとんどが成立

相手が協議に応じない、双方の納得がいかないなどで協議離婚がうまく行かない場合、家庭裁判所に調停をしてもらいます。相手の承諾無しでもできます。一ヶ月ごとに一度、半日近くかけて行われます。数ヶ月から一年経つと、調停成立、不成立、取り下げなどの形で、決着がつきます。取り決めた内容は強制執行力のある調停調書にまとめられます。
この調停は必ずしも離婚する場合だけでなく、「円満調停」といって、夫婦仲の不仲を修復するためにも調停ができます。また離婚原因を作った有責配偶者からも調停の申し立てが出来ます。
調停離婚は離婚全体の9%です。協議離婚、調停離婚でほとんどの離婚が成立しています。

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